幼馴染

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 幼稚園に入ったばかりの頃。  目を開けると、そこには知らない男の子が寝ていた。  家の軒先。お気に入りの昼寝の場所で、勝手に寝ていた。  お母さんにその子を起こせといわれたけれど、揺すっても叩いても起きなかった。  もうすぐ小学一年生の頃。  目を開けると、知らない女の子が鼻と口を塞いでいた。  苦しくて飛び起きた。  勝手に横で寝ていたのを怒っているのかな。でも、母さんに連れてこられた家で、何もする事が無かったんだから、許して欲しい。  小学校一年生になったばかりの頃。  目を開けると、そこには見覚えのある男の子が立っていた。  大きい声で名前を呼ばれたから、びっくりして目を閉じてうずくまってしまった。  男の子はたくさんごめんと言っていた。  小学校三年になったばかりの頃。  目を開けると、見覚えのある女の子が、廊下を歩いていた。  ちょっと夜更かしして、眠くてたまらなかったけど、急いで教室から出て呼び止めたら、驚かれてしまった。  中学一年生が終わる頃。  目を開けると、大好きな人に頭を下げられ、ごめんと告げられた。  ぎゅっと目を閉じて、恥ずかしさをこらえながら、一生懸命伝えた気持は届かなかった。  中学三年生が終わる頃。  目を開けると、一番泣かせたくない女の子が泣いていた。  でも、二つも年が離れていて、妹にしか思えなくて、これからは電車に乗って遠いところへ通うから、なかなか会えなくなってしまう。それは、考えるだけでも辛かった。  中学二年生の頃。  目を開けると、汗臭い制服のシャツに顔を押し付けられていた。  上を見ると、すごく怒ったような、困ったような、悲しいような目に、じっと見つめられた。  ずっと好きだった人の匂いってこんな匂いだったのか。  高校二年生の頃。  目を開けると、そこには携帯電話が落ちていた。頭にぶつかったのはこれか。  画面には、よく知っている女の子と、知らない男とのやり取りが表示されていた。  思わず階段を駆け上がって、それを落とした少女を強く抱きしめて、思っている事を全部告げた。  作戦成功と言いながら笑顔を浮かべる女の子は、例えようもない程、大切に思えた。
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