246人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「……ごめん、彩香。私、先に帰るわ」
私が席を立つと、彩香は「ええ……」と、情けない声を出し渋り顔を見せた。
でも、それ以上は引き止めようとはしない。
私の気が変わらないことを彼女は知っている。
これが、私達が友人でいられる最大の理由だろう。互いに踏み入るラインがしっかりとしてる事はとても楽だった。
「じゃあね。また、後で」
「りょ。オツー」
彩香とあっさりとした挨拶を交わした後、呆気に取られる健吾と無表情の陵の間を強引にすり抜けて、私は階段を駆け降りた。
帰る
と、言っても行き先は彩香のアパート。
ここ二週間はずっとそうしている。
最初のコメントを投稿しよう!