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第15章 #2
「あんなものどこで手に入れたのよ」
コンクリートの階段に二つの足音が響く。私は足元に注意しながら、後ろを歩く恭哉に聞いた。ただの興味本意で。
「っ……馬鹿にするな。青森の工房から取り寄せた高級品だぞ」
「高級でもレア物でも私だったらいらない」
「頼まれてもやらないから安心しろ」
「それが、恩人に向かって言う台詞かしら」
三階と二階を繋ぐ踊り場に降り立った私が、後方を振り返り見上げると、恭哉はぐうの音も出ないといった様子でたじろぎ、足を止めた。
彼はニコリと微笑んだ私と目が合うと、ハァッと息を吐きだし、髪を乱暴にかいた。そして、足早に階段を降りると私の隣に並んでこう言った。
「わかったよ。で、アンタは何が欲しいんだよ。あ……、そもそも誕生日いつ?」
「ちょうど、来月なの。さて、どんな高いものおねだりしようかっ……」
期待に胸を膨らませあれやこれやと思案する私が、階下に降りようと踵を返したその時だった。
「蒼井っ……!」
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