第18章

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ミラーキャビネットを開き、カップに生け花みたいに飾られた二本の歯ブラシ、青の方を選んで取り出した。 腰にタオルを巻き付けて、鏡に映る自分が間抜け面で歯を磨いている。 無心になることで気持ちを落ち着けようと必死だった。油断すればまた反応するだろう。それが怖かった。 けれど、俺のそんな努力を簡単に打ち砕くのは……またしても彼女の影。 『私をただの愛人だって馬鹿にしてたくせにっ……、自分だってただの浮気男じゃない。真夜中に女連れ込んで、会社ではっ……キ……キスなんかしてっ……!いっとくけど、私は誰でもかれでも受け入れるようなやっすい女じゃございませんからねぇ!!』 ……わかりやすい嫉妬なんかしちゃって。可愛いのか、可愛くねぇのか。 どこまでも不思議な女。 だからこそ……、気になって仕方がない。
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