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第18章 #2
カナコは俺の声なんか聞こえていなかったみたいに、その場でうずくまったまま何の反応も返しはしなかった。
やっぱり、怒らせてしまったんだ……
内心焦る俺は饒舌に、体調なんかなんて事無い素振りを装い話題を変えた。
「そうだ……泊まってくんだろ?何日位こっちにいるの?前にカナコが家に来た時に置いてったものそのままにしてあるから好きに使って。って……、元から俺のじゃ無いか……ハハッ……ハ……」
“前に”と、いっても俺が日本に帰国して直ぐの事だから一年以上も前の話。その間、俺達は頻繁に連絡を取り合うでも無く。
それは、まさに空白の交際期間。
互いの距離感が掴めず、時おり息苦しいとさえ感じてしまうのは……仕方の無い事かもしれない。
その時だった。カナコはキッと素早く顔を上げ、俺を睨みつけながら唇を震わせた。
「恭ちゃん……別れよ?」
「……え?急に何言ってんのっ……」
「私、向こうに好きな人が出来たの。今回帰って来たのはその話をする為。ちゃんとけじめをつけて前に進みたかったから。私達が惹かれあったのは恋とか、愛とか……そういう綺麗なものじゃない。……ただの……、通過点だった。」
「っ………………」
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