第19章 #2

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複雑な面持ちでうつ向くと、小さなリボンの結び目に縫い付けられた鈴がチリリリン……と、なんとも可愛らしい音色で鳴いた。 ──これじゃ、本当に猫じゃない……。このプレゼントを誠さんが反対したのだって“私を飼う事は誰にも出来ない”そんな、意味合いが込められていたんじゃ……。 なんて、考え過ぎかな……。 ふいに、恭哉が後ろから私を抱き締めた。両手に小さく込められた力は、その気になれば容易に振りほどける程弱々しい。 私の首筋に顔を埋める彼が、一呼吸置いてから「選ぶ男間違えたとか思ってんだろ」、ポツリ呟いた。 不安そうな声色に、愛しさが溢れて止まらない。気を抜いてしまえばあっという間に涙がこぼれそうで……、私は彼に体重を深く預ける事で顔を隠した。 「なんで……、恭哉は秘書っていう仕事を選んだの?やっぱり……、誠さんを尊敬しているから?」 父親を酷く嫌う彼が、あの場所に拘る理由が気になって、私はそんな質問を彼に投げ掛けた。 「……それも、あるよ。副社長は結城家一の人格者。結城リゾートを背負って立つのはあの方しかいない……、そう思ったから。だから、アンタみたいな生意気な女を愛人として囲った時は驚いたよ。ああ……、結局一緒なんだなって……裏切られた気分にもなったし」 「……私の事、目の敵にしてたものね」 「うん。追い出してやろうってズット思ってた……。アンタも、あの男も……」
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