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感情の無い冷めきった低い声に、ゾクリ、背筋が震えた。
出会った頃の恭哉は、いつも光の映らない人形のような瞳で私を捉えていた。そこにあったのは軽蔑の二文字。
父親への憎悪がその裏に隠されていた事なんて……、当時の私は知るよしも無く。
「……ごめん、ね……」
謝って済む話じゃないのはわかっていた。
それでも、彼を傷付け続けていた事実に私の胸はギシギシと悲鳴を上げる。それは……、寂しさにも似た想い。
「……居場所を見出だそうと必死でもがくアンタを監視してる内に情が移ったのか……。生まれて初めて……、心が欲しいと思った。そりゃあ信じて傷付くのは怖いけれど、俺……アンタになら裏切られてもいいって思うんだ」
「っ…………」
「……今、バカな男だと思っただろ?」
私の顔を覗き込んだ恭哉が、ふっと息を吐き出し微笑を浮かべる。戸惑いがちなその瞳を真っ直ぐに見つめ返し、私は顔を思いきり横へ振った。
「……恭哉はまだまだね?全然……私の気持ちをわかっていないもの」
「どういう意味だよ」
「貴方に出会えて良かったなって……思ったの。人一倍臆病で、繊細な恭哉を私が守る。絶対に……離れてなんかあげないから」
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