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「へぇ……、凄い偶然だな。それは、俺も考えてたよ。相手の望むようにもてなす。やっぱり、俺って職業病かもな……?」
鼻を鳴らして嘲笑。恭哉は何処から取り出したのか……、私の目の前に手の平サイズの小さな箱を差し出した。
「っ……!?」
私にはその中身が何なのか、直ぐにわかった。だからこそ……、見たくは無かった。
ゆっくりと、恭哉の指先に寄って開かれる箱。照明に照らされて、ダイヤの指輪がキラリと光った。案の定の展開に、大粒の涙が頬を伝う。
「アンタに“結婚しよう”って……、言うつもりだった。」
「ふふっ……だった?」
笑いたくも無いのに、どうして。
笑ってしまうの……。
「そう。“だった”だよ……。もっと、良い格好して、洒落たレストランなんかで……。それで、アンタが頷くまでずっと緊張する。頷いて貰えたら……、俺は笑う。最高に幸せな瞬間。臭いかもしんねぇけど、それが当初の予定。まぁ……、もう過去だけど。」
「どうしてよ……。いいじゃない!どんな姿していようと恭哉は、恭哉じゃない。場所が何だってっ……」
「……ごめんな……、陽路。」
「っ…………」
彼の声で名前を呼ばれても、少しも嬉しいと思わなかった。なんて冷たく、残酷な響きなんだろうと……。絶望に、気が狂いそうだった。
「俺は家族なんて欲しくない、一人で生きてゆく。誰も信じなければ、裏切られる事もない。アンタなら……、わかるだろ?」
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