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私だって……見るからに大人しそうなスタイリストの女の子が『これに着替えてくれ』って、例のブツを取り出した時はビックリ仰天。そりゃもう、抗議したわよ。
でも、数字が……とか。お茶の間が……とか。それらしい言い分にまんまと丸め込まれたというか。流されるままにって感じ。
「後から、主任に大目玉食らって散々だった。次は乗せられたりしないようにっ……だって。ちょっと位、良いじゃないのよね?」
「へ……?まさか、次もあるのかよ」
「そう。明後日から大阪に出張。せっかく、二ヶ月前からサロンに予約入れてたっていうのにそれも無理そうだし……身も心も、爪も毛先も何もかもボロボロ。……なーんて。忙しいのは嫌じゃないんだけどねー」
ふふっと笑みを一つ、髪を指先にクルクルと巻き付けて愉快な私とは真逆に……
「……調子に乗ってるといつか痛い目に合うぞ」
一口大に切ったハンバーグをそのままに、トレイを手の甲で押し返した恭哉は、テーブルに片肘を着きそっぽを向く始末。
──何が気に入らないというのか……。貰ったヒールを履かなかったせい?
「恭哉が食べないなら……頂きまーす」
「480円」
「え?」
「払えよ。当たり前だろ」
…………ケチ男め。
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