12.再会

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梅雨が終わり、本格的な夏を迎えようとしていた。 大学を卒業し、大学院に進学した私は二年の修士課程を修了した。 その後国内大手製薬会社に入社し、仕事で埋め尽くされるほど多忙な日々を送っていた。 珍しく佐崎(さざき)センター長に名指しで呼び出され、何事かと緊張しながらセンター長室を訪問した。 そんな私を待ち構えていたセンター長の言葉に目を丸くする。 「…本社に、転勤…ですか…?」 「ああ、九月からね。 突然で申し訳ないけど、本社からどうしても君に来てほしいと声が掛かったんだ」 突然の辞令に驚いて、その場に立ちすくんだ。 なぜ、この時期に? 開いた口が塞がらないとはこういうことだろうか。 センター長の言っていることを理解するのに時間が掛かった。
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