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その日の夜、仕事を終えた私は真っ先に同期であり友人の夏海(なつみ)宅に向かった。
入社してすぐ米州研究センターへ配属された私は夏海や同期の顔をほとんど知らなかった。
今の研究所に配属され、みんなと上手く打ち解けることができるのか不安だった私に真っ先に心を開き、いろいろ助けてくれたのが夏海だった。
仕事のことで悩むと、互いに相談し合うようになり、今では同じ研究者として良き理解者であり、友人としても大切な人だ。
夏海は突然の誘いにも関わらず、快く了承してくれた。
すでに日付は変わっていて、こんな田舎の終電はとっくに終了している。
シャワーを浴びさせてもらって、パジャマまで借りた私は泊まる気満々だ。
来る途中のコンビニで購入した彼女の大好きなおつまみをテーブルに広げると、夏海は嬉しそうに缶ビールを開けた。
「そっか…。
本社に行っちゃうんだね…」
「うん…」
夏海にセンター長とのやりとりをかいつまんで話すと、意外にも彼女は驚かなかった。
まるでいつかこの日が来ることを見透かしていたような複雑な表情を浮かべていた。
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