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一杯目:モスコ・ミュール
おつまみにミックスナッツをどうぞ。
実を申しますと私、昔は看護士として病院に勤めておりました。
いまでこそ「看護師」と一括りですが、昔は女性を看護婦、男性を看護士・・・武士の士ですね、そう呼び分けられていた時代の話です。
・・・え?それじゃあ色々幽霊的な体験も多かったのか、って?
いや、それがサッパリ。どうも霊感と呼ばれるものには縁がないらしくて。ハハハ・・・
ただ、やはり場所柄職業柄でしょうか。
知り合いには体験される方が多くて、直接体験談を聞く機会は頻繁にありましたね。
今からお話しするのは私が看護学生として働きながら学んでいた時期に、クラスメイトが体験した出来事です・・・
私と同じように働きながら看護学校で学んでいた・・・そうですね、仮名を石川君としておきましょうか。
石川君はとある精神病院に勤めておりました。
そこはだいぶ歴史がある病院で、規模も大きくて。
もちろん歴史がある、ということは建物も古かったりするのですが、新しい病棟を建てたりしていたのでかなり儲けていたみたいでした。
ただ、やっぱりお金を持っていらっしゃる人ほどケチというかなんというか、古い病棟を壊すのもお金がかかって勿体ない・・・と。
どうしたと思います?
その古い病棟をちょこっとだけ改装して、寮にしたんです。
石川君はその寮の4階に住んでいたんですよ。
地元の高校卒業後、看護学校入学と同時にこの病院に勤務した石川君は、
『看護学生は原則、寮に入ること』
という病院の規則に従ってこの寮に入りました。
・・・「なんでそんな規則が?」ですか?
そりゃあ、普通のアパートに比べて安いとは言え、家賃がかかりますからね。
寮が埋まればそれだけ病院の収入に・・・更に家賃の補助という名目で税金もアレヤコレヤと節約できるとかなんとか・・・
壊してお金がかかってたはずの建物で儲ける・・・やっぱり金持ちは考えることがえげつな・・・いえいえ、鋭いですよね。ハハハハハハ・・・
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