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そのおばさんは、ママがつかわないような香水の匂いがプンプンして、私は少し気分が悪くなった。
下を向いていると、そのおばさんが近づいてきて、私を上から下まで舐めるように見つめたのだ。
「よかったわねえ、タカヒロさんに似てて。でも、その洋服はいただけないわね。もっといいものを、私が買ってあげましょうか?」
そう言って笑ったのだ。
私は、幼いながらも、怒りが爆発した。
「ママに作ってもらったの!みんなかわいいって言ってくれるもん!」
私がそう言うと、そのおばさんは一瞬びっくりしたような顔をして、すぐにニヤニヤと嫌な笑いを浮かべた。
「あらぁ、ごめんなさい。知らなかったのよ。」
そう言うと、ママを見てさらに笑った。
結局、新築の家などろくろく見ずに、自分の自慢話ばかりを並べ立てて、最後にタカヒロさんによろしくねと言い、帰って行ったのだ。
ママがそのおばさんを見舞った日、帰ってきたママは突然体調を崩した。奇しくも、そのおばさんが入院している病院に、入院する羽目になったのだ。一週間の入院を経て、帰ってきたママはなんとなく雰囲気が変わっていた。
まず、メイクが変わった。お化粧など、ほとんどしなかったママが、毎日どこかへお出かけするようなバッチリメイクをするよになり、口紅の色が濃くなった。そして、何より、毎日の食事が変わった。ママは、優しい味付けの素朴な和食が得意だったのに、退院して帰ってきたママは、どこかのレストランで出てくるような、コース料理みたいな料理をするようになった。味は悪くはないけど、私には食べ辛かった。今までは、お箸で食べるような料理ばかりだったのに、テーブルには必ず、ナイフとフォークが並べられて、音を立てると、厳しくしかられるようになった。
ママはお酒なんて飲まなかったのに、必ず、夕飯の後にワインを飲むようになった。そして、毎日、シーツを替え、インテリアも、今までママが好きだったカントリーを一切やめて、すべてスタイリッシュな家具に買い替えた。さすがのパパも、ママのあまりの変わりように、毎日喧嘩が絶えなくなった。
「タカヒロさんの為を思って、毎日頑張ってるのに、どうして?」
喧嘩のたびに、ママがパパを責める。
「君は変わった!」
パパは悲しそうにママを見る。
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