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けれど刹那の逡巡の後、綾斗は乱暴にふとんを撥ね飛ばし、ベッドから降りた。
まだほんの秋口だというのに今夜は馬鹿みたいに寒かった。
パジャマがわりのスウェットの上から薄いモッズコートを羽織り、家の鍵だけ握って静かに部屋を出る。
隣の部屋でヒステリーを起こしている透子に気づかれぬよう、極力注意を払いながら。
常夜灯のついただけの一階リビングには、もちろん今日も誰もいない。
この屋敷の主である透子の父親は、今月も帰ってくる予定はなさそうだった。
玄関を出て鍵を閉める。
深夜の湿り気を帯びた冷気が肌に張り付き、綾斗は一度身震いした。
溜息をひとつ吐き、駅に向かって歩き出す。
脳に響く呼び声が、少しだけ近くなった。
◇![image=502722037.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/502722037.jpg?width=800&format=jpg)
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