雛鳥の罪、雛鳥の罰

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その日から、壊れた日常が始まった 雛が生きているという演技の延長で、美鶴は中学校に届け出を出した 周りの人間は心の壊れた美鶴を見て相沢一家に同情した 美鶴には周りの人間が演技を手伝ってくれている事に感謝していた おかしいのは自分だと、何度言っても彼には通じない 雛が美鶴の肩を叩いても、何らかのリアクションを起こしても彼は見てくれない ただただ、何もない空間に雛が生きているという設定で話しているだけだった 梟も鷲も最初は必死で雛を守ったが、そんな二人を見ていられず、家族で交流する事はなくなった 大学に進学すると同時に梟は家を出た 鷲は学校以外をほとんど部屋で過ごした 雛もまた、家族と顔を合わせぬようにした そんな生活を続けて一年、その日の日記に雛はこう記述した 『今日はお母さんが死んでちょうど一年 一年前から私は、お父さんにとって死んだ事になってる あの事故の時、お母さんの最後の声がはっきり聞こえた お母さんは「助けて」って言った やっぱりお母さん無理してたんだ 怖かったんだ 痛かったんだ 苦しかったんだ 生きたかったんだ ごめんなさい 最近、力や体力がついてきた あの日にあれば、お母さんを助けられたのに でも、これでお母さんの言葉を守れる 強くなって困ってる人を助ける 私の大きな体はそのためにあるから』 雛は日記を閉じ、引き出しに入れて鍵をかけた後ベッドに入った 「でも、やっぱり死んだ事にされるのは……寂しいな」 誰に聞かせるでもなくそう呟いて、雛は眠りについた
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