雛鳥の罪、雛鳥の罰

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これは5月半ばに起きた話だ その日、雛は母親のあさひと夕食の買い物に出かけていた 車に乗り、いつものスーパーへ向かう その車内で雛は小さく口を開く 「ねぇ、お母さん 私の名前、おかしいの?」 雛は助手席に座り、隣の運転席にいるあさひを見る 「どうしたの?急に」 「クラスの小樽くんがね、私の体は大きいのに“ひな”なんておかしいって…」 雛の身長は今や170に近づいており、小学6年生にして成人男性のそれと変わりない彼女は周りの人間から浮いていた 小さい筈の“雛”が大きいなんて変だ、とクラスで笑い物にされたのだ 「私、好きで大きくなったんじゃないもん…」 雛は服の裾をぎゅっと握りしめる 「雛の名前はおかしくないわよ」 赤信号で止まった彼女は雛の頭を撫でる 「生まれたてのヒナのように純粋な心を持ったまま生きて欲しいから、“雛”ってつけたの それにお父さんとお母さんから見たら、雛も梟(きょう)お兄ちゃんも鷲(しゅう)お姉ちゃんも、皆私達の可愛い子どもよ」 そう言ってあさひは頭を撫で続ける 雛も最初は照れていたが、嬉しそうに微笑んだ
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