ぼくらは友達

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「おーいパンダ君、君暇だろ? 使い頼まれてくれるか」 あの電話以降、パンダ君と私を呼ぶ上司が、私に完全な私用を頼んできた。正直、それぐらいは自分でやれと思ったが、相手は上司であり、パンダの一件で頭が上がらないというのもあった。 会社を出て、オフィス街を抜け、郊外を行く私の足は、あるゴミ捨て場の前で止まった。 そこに、どこかで見覚えのある、薄汚れたパンダのぬいぐるみが捨てられているのを見つけたからだ。私は衝動的に、その汚いパンダのぬいぐるみを拾い上げ、尻尾の下にあるタグを確認していた。 『たなか ゆうすけ』 タグにマジックインキで書かれた下手くそな字。これは、紛れもない私のぬいぐるみだ。 父親を早くに亡くし、女手一つ、仕事に暇がない母が、寂しくないようにと幼い私に買い与えたパンダのぬいぐるみ。 初めて買って貰ったぬいぐるみに喜び、それから私は、食事の時も、寝る時も、ぬいぐるみといつも一緒だった。抱き抱えたパンダのぬいぐるみに、私は言った。 「ぼくたちは、ずっと友達だよ」 ある時、近所のいたずらっ子が私のぬいぐるみを指差してからかった。 「お前、男のくせにパンダのぬいぐるみなんかで遊んでんのかよ、かっこわりー。俺のスカイサンダーロボ、かっこいいだろ」 確かに格好良く、羨ましかった。それに比べ、自分は男なのにパンダのぬいぐるみ…。もう、そんな歳でもなかったのだ。 いつしか、パンダのぬいぐるみで遊ぶ事もなくなり、気付けば、あんなに大事にしていたはずのパンダのぬいぐるみを、どこかになくしていた…。 そうだ、そうだった。何故、私は今まで忘れていたのだ…。 「ぼくたちは、ずっと友達だよ」 目から、大粒の涙がこぼれていた。 「ごめんな、待っただろう。中々一緒に入れるレストランがなくて…。今度は一緒に入れる店にしよう。出来たら、笹の葉がメニューにある所が良いな」 と、私は子パンダを抱き抱え、笑いながら言った。image=502718830.jpg
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