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それから、どうやって連絡したのか覚えていないけど、救急車が来た後に警察が来て、色々と聞かれたような気がする。
私は説明のしようが無かったけど、この部屋の人の知り合いで鍵を預かっていたから遊びに来た、とだけ話した。
その死体は木村陸人という、この春に上京してきたばかりの大学生で、死後1ヶ月ほどが経っていた。死因はくも膜下出血による突然死だった。
よくある都会の孤独死だ、と警察は淡々とした口調で話していた・・・。
死亡日時は私がパスケースを落とした日の前日だった。
陸人は自分の死に気付いて欲しかったのだろう・・・。
だから、毎回家に来るように誘っていたのだ。
私は・・・出会ったあの日に陸人の家までついて行けば良かった、と後悔している。
そうしたら、もっと早く見つけてあげられたし、それに・・・好きになることは無かった。
そう考えてから、私の中で陸人の言葉が蘇った。
はじめはただ利用しようと思ったって。だけど、今は・・・・・・。
陸人はおばあさんに道を聞かれた私を見かけているから・・・その時に私も気付けば、生きている陸人に出会えたのかもしれない。
例え結末は同じでも、私はあの日の生きている陸人と出会いたかった。
完
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