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「家に来る?」と言ったのは私の方だった。
「美鈴の家・・・?近いの?」
「・・・少し歩くけど」
何となくぎこちない雰囲気で歩き出すと、陸人が立ち止まって首を振った。
「ごめん、今日はやめておく」
月明かりのせいか、少し顔色が悪く見えた。
「大丈夫・・・?」
「なにが?このまま美鈴の家なんて行ったら、襲っちゃいそうなだけだよ」
陸人がいつもの笑顔を見せた。だけど、やっぱり心なしかさっきよりも顔色が悪く見える・・・。
「明日、また会おう」
そう言って陸人が私の両肩に手を乗せると、そっと顔を近づけてきたから、私も目を瞑った。
だけど明らかに躊躇しているのが伝わって、少し時間が空いて頬に軽くキスされた。
そんなに純情なのか、それとも私と付き合うことへの躊躇(ためら)いなのか・・・。
目を開けると陸人は「また明日」と言って、小走りで去って行った。
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