6人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
陸人の家はコーヒーショップの裏通りにある、ということは知っていた。
家に誘ってくる度に、黒い壁のマンションだとか3階だとか角部屋だとか・・・聞いていないのに情報をくれていた。
マンション名は何だったかな・・・?花の名前が付いていたような気がする。
私は裏通りを歩いていると、光沢のある黒い壁のマンションを見つけた。“カトレアパレス”という名前だったから、ここが陸人が住んでいるところだと思った。
私がオートロックのところに鍵を差し込むと、ロックが解除されて自動ドアが開いた。
「ビンゴ」
そう呟きながら中に入ったけど、私はさっきの“利用しようと思っていた”という陸人の言葉が頭から離れなかった。
つまり、何かに利用しようと思って近づいたけど、今は本当に好きになったってことなのかな・・・?
だけど、好きになったことが辛そうにも見えた。
それに、好きだと思っていなかったのに、毎回部屋に誘っていたのも気になるし、好きだと認めた日に部屋に誘わなかったのも・・・。
こんなことをして家に呼ばなくても、連れて行ってくれたらいいのに・・・。
陸人の不可思議な言動に振り回されているけど、それも少しドキドキしている自分を感じた。これから、どういう付き合い方をしていくんだろう・・・?
そんなことを思うと少しワクワクしていた。
最初のコメントを投稿しよう!