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「アレルギーっていうか、陽のは心因性だから。
卵がどうこうっていうより、基本菜食主義だし」
驚いたように俺と黄雨は顔を見合わせた。
「・・・じゃあ、今日の献立って無神経だった?」
「それはないんじゃねぇの。
食べられない、ってわけじゃないから、出された物なら食べるし」
うろたえる黄雨に言及すると、空は食事を再開する。
「普通に旨いから、大丈夫だろ。
俺はスキ」
そう言って微笑んだ空に、思わず『タラシ』の三文字を投げつけてやりたくなった。
「・・・お前さ、どこでそういうのを覚えてくるわけ?」
「?日生には、『愛想よくしておいた方が、得だ』って言われてるけど。
悪意より好意の方がタチが悪いんだから、なるべく人のフトコロに入っておけ、って」
・・・
あざといとも言い換えることのできる処世術に舌を巻く。
っていうか、日生のその言い分も何なんだ、と自分より幾分か幼い従妹に密かに感嘆の溜め息を吐いた。
一方、黄雨はそんな空の対応には慣れているのか、俺達を見て溜め息を吐く。
「私は慣れてるからいいけど、世に出たら何人の女の子が泣くか、不安になるわよね」
そう言われる程度には、空は可愛いらしい顔立ちをしていた。
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