Bar ムーンライトリバー

23/23
123人が本棚に入れています
本棚に追加
/191ページ
「・・・何だ、それ」  何より、自分がいない間にそんな危ないことになっていた、という事実に驚く。  話すだけ話すと、陸は我関せず、といったていでグラスを煽った。 「まぁ、後は本人同士の問題でしょうから、私達が口を挟むことでもないでしょう。今でも海が槙チャンの傍にいるところを見ると、大丈夫じゃない?」 「・・・」  若干冷たいようにも聞こえるが、彼女の言葉は至極まっとうなものだ。  これが、アメリカでいう個人主義というものだろうか。 「私達には特殊な事情があるから、一応 今は日生ちゃんっていうトラブルシューターがバックに付いてる。でも、本来は自分のことは自分で解決しなきゃいけないのよ。  これ以上、あの女の子を犠牲にしたままで いいわけがない」  固い声音で紡がれた言葉は、ぬるま湯に浸かったままの自分の頭を叩くには充分な言葉だった。  自分もそうなのだろう。 「俺は・・・」  硬く拳を握りしめ、その言葉を吐き出した瞬間、店の扉が開いた。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!