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「・・・その様子じゃあ、知らなかったみたいだね」
何食わぬ顔で私を見る日生ちゃんは、私と綾兄の関係については知っているのだろう。
「調べによると、シズがこのバーに居着くようになったのは、高校に入ってすぐの頃みたい。ここでボーイの真似事をして、住み込みのアルバイト、って誤魔化してるみたいだよ。
因みに、補導が入った時は、森(しん)兄の名前を出してるとか。いくら顔がそっくりだからって、止めて欲しいよね」
・・・
怒っている。間違いなく怒っている。
兄の名を騙られて、彼女は相応にご立腹のようだ。
まぁ、彼女の命の恩人であるという兄・森君は大のシスコン。それが因果して、幼少時に病弱だった彼女を助けるため、弱冠十四歳で医師免許を取った。
そして彼女も、そんな兄のシスコンぶりに辟易しながらも、立派にブラコンぶりを発揮している。
いくら相手が従兄弟の静流(しずる)君でも、兄の名を騙られるのは許せないのだろう。
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