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「流石は槙さんだよね」
「どういう意味?」
「ん?そういうトコロ。普通、管轄のことにまで頭が回らない」
「私、一応薬学部出身なんだけど」
中退だけどね、という言葉を飲み込むと、納得したように彼女は笑った。
ついでに言えば、この六年の病院勤務で、薬物中毒や傷害事件の書類は見慣れている。
言外の意を示して肩を竦めると、彼女はそのまま口元を手のひらで覆い隠した。
「詳しくは言えないんだけど、それだけ面倒なバックがある、ってことだよね」
つまり、それ以上は踏み込むな、ということか。
「分かった、それ以上は聞かないことにする」
好奇心で身を滅ぼす気は毛頭ないので、降参の意を込めて、両手を掲げた。
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