歪んだグラスに願いを

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昨日のことは夢ではなかった。彼は箱からグラスを取り出した。彼はグラスをちゃぶ台の上に置いた。それにしても、あの骨董品店の店主が言ったことが気にかかる。願いが叶うが実際に使ってみないとわからない、なんだか物凄く嫌なことが起きるのではないかと不安になる。彼はグラスを置いたまま何事も無かったかのように過ごした。 しかし、人というのは何かと願望が頭を過ぎるものである。雨が止んでくれないか、買い物せずに飯が食えたら楽だ、もっとお金があればどこか遊びに行くのに、少しの時間の中でも彼は何かと願ってしまいがちだった。 夜になると彼はグラスの効果を試してみたくなった。考えた末に老人が言った、使えばわかるというのがいきなり致命的な災いに見舞われるということではなさそうな気がしたのだ。彼はグラスの前に指を組んで跪いた。しかし願い事を用意していなかった。彼は思い浮かぶままにありきたりのことを願った。 「お金が沢山欲しいです。」 そして眠りに就いた。
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