0人が本棚に入れています
本棚に追加
辺りが暗くなってそろそろ止め時だとわかっているが、マサシは釣りをしている。
森の奥にあるこの川は地元の釣り人が好む絶好のスポットだ。しかし、夜になればここを頻繁に訪れる者でさえ、道に迷い帰れなくなるという。そんな場所でマサシは一人、あと一匹釣れたら帰ろうと思っている。
いよいよ闇に包み込まれるというギリギリのところでマサシは魚を釣り上げた。手応えが軽く、小物なのがわかる。しかしこれで彼は潔く帰ることができる。自分との勝負に勝ったような気分だ。
だがどうしたことだろう。マサシは立ち尽くした。釣れたのは今までに見たことがない魚だった。黄金に光り輝く、それでいて七色の彩色が散りばめられた宝石のような魚だ。マサシは畏怖の念を覚えた。川へ戻した方がいいのかもしれない。でも、もったいない気もする。
しかし闇が深くなってきているため、これ以上迷ってはいられなかった。とりあえず持って帰ることにして、マサシは急いで森を出た。
最初のコメントを投稿しよう!