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「蘇(そ)か」
「貰い物だ。
お前、
甘いもの好きだろう?」
ああ、
と嬉しそうな顔になる博雅を晴明が笑って見やる。
しばらくはそうやって盃を交わしていたけれど。
陽が落ちて露が降りてきた庭に仰向けになったままの春花を見て、
博雅が溜息を落とした。
「笛を吹いてくれないか」
気分を変えようとでも言うかのように、
晴明がねだる。
「月が昇る。
久しぶりにお前の笛が聞きたい」
にこりと笑った博雅が笛を出す。
いつでもどこでも、
楽器を奏でるのは彼にとって最大の喜びだった。
「今日の笛の会で唐渡りの珍しい楽譜があった。
新しい曲もいくつか覚えてきたから、
それを吹こう」
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