第2章

7/17
前へ
/36ページ
次へ
唇を笛に当て、 息を整えて吹き込む。 澄んだ音が高く響き、 豊かに空間を満たしていく。 笛の音が光となり風になる。 笛に合わせるかのように水面がさざめき、 木の葉がそよいだ。 いつのまにか春花が簀子に上がっていた。 「春花?」 声をかけた晴明には見向きもせずに、 春花が博雅を見つめる。 旋律が変わる。 余りなじみのない異国の曲だ。 軽やかな調べが高く低く流れていく。 春花の瞳から、 水晶のような涙がぽろりと零れ落ちた。 後から後から透明な雫が零れていく。 それに気づいた博雅が笛を唇から離した。 「……春花?」 「その曲は?」 晴明が問う。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加