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唇を笛に当て、
息を整えて吹き込む。
澄んだ音が高く響き、
豊かに空間を満たしていく。
笛の音が光となり風になる。
笛に合わせるかのように水面がさざめき、
木の葉がそよいだ。
いつのまにか春花が簀子に上がっていた。
「春花?」
声をかけた晴明には見向きもせずに、
春花が博雅を見つめる。
旋律が変わる。
余りなじみのない異国の曲だ。
軽やかな調べが高く低く流れていく。
春花の瞳から、
水晶のような涙がぽろりと零れ落ちた。
後から後から透明な雫が零れていく。
それに気づいた博雅が笛を唇から離した。
「……春花?」
「その曲は?」
晴明が問う。
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