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「天竺のまた向こう、
西方より伝わってきた曲だと聞いた」
春花が博雅の脇に跪く。
「止めないで……続けて」
童女のようなその瞳で請われて。
博雅がまた笛を取り上げる。
哀愁を帯びた異国の音色が流れだした。
春花の瞳が閉じられる。
そう……この振動……旋律に覚えがある。
花であった時は理解できなかった出来事が、
ひとの身体を持ったことで、
再構築され記憶として甦ってくる。
……そう、
これは。
あのひとが吹いていた曲だ。
その音がたゆたう空気の中に居るのが、
とても心地良かった。
高く伸びる音が心を揺らし、
低く響く音が身体を震わせる。
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