第2章

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春花がそっと博雅の膝に頭を落とす。 演奏に没頭してしまった博雅は、 もう気づかない。 思い出す。 お前は美しいね、 と撫でる指を。 もっと綺麗に咲いておくれと囁く甘い声を。 自分に語りかけてくれた、 愛しいひと。 その人のために美しく花弁を広げ高く香った。 プリズムのように、 記憶が断片的に甦っては消える。 波璃のように澄んで響く笑い声。 身につけた装飾品が触れ合ってたてる小さな金属音。 乾いた風の匂い。 陶然としていた春花の瞳が―――突然見開いて。 晴明がはっと身構えた。 あの時も、 あの人は自分の傍らで笛を吹いていた。 それが突然はたりと止んで。 不意に空気の色が変わった。
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