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「珍しいものを見せてやろう」
招き入れられた几帳の陰には一輪の赤い花。
素焼きの壺に土を入れた中にすっくと伸びる茎。
瑞々しく開いた緑の葉。
甘い匂いがいっそう強くなる。
先ほどからの香りは、
幾重にも重なった深紅の豪奢な花弁からと知れた。
先端が薄紅の花びらは、
中心に行くにつれてその紅の色を濃くしている。
「見た事がない花だな……なんというのだ?」
「名は知らない。
唐渡りの文箱の中に落ちていた種を見つけてな。
蒔いてみた」
美しいだろう、
と晴明が自慢げに言う。
「咲かせるまでけっこう手間がかかったぞ。
寒いのはだめらしいし」
「葉は長春花(こうしんばら)に似ているが、
花弁の枚数と趣は全く違うな……あッ」
思わず伸ばした博雅の指に鋭い痛みが走った。
人差し指の先に、
みるみるうちに紅い玉が盛り上がってくる。
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