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失われていく生命の波動を、
どうしようもできなかった悔しさ。
「……私は、
ひとに、
なりたかった」
ぽつりと朱唇から言葉が零れる。
あのひとを守れる腕が―――身体がほしかった。
博雅の膝に伏せた頬を涙がほろりほろりと伝っていく。
晴明がそっと部屋を出て行くのにも気づかずに、
博雅は繰り返し繰り返し笛を吹き続けていた。
「……春花?」
楽を奏でる陶酔から博雅が覚めた時。
彼が見つけたものは、
自分の膝に頭を預けた春花の安らかな寝顔だった。
当惑したものの起こすのも忍びなくて。
頬に伝う涙の跡を拭おうとした指が躊躇って握りこまれる。
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