気が付けば、あっという間に……

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「え?……」 めくり上げた布団の下に居たのは 仰向けで動かない彼女の姿 心臓には包丁が突き立てられ 真っ赤な血はベッドに染み込んでいる 目を擦り、 再び目の前の光景に目を向けてみる だが、その姿に変化は無い 「動くな……」 その時、背後から聞こえる聞き覚えのある声 振り返るとそこに居たのは スウェットにジャージ姿の彼女 俺は目を疑った ベットにも同じ格好の彼女が殺されているからだ 理由が分からなくなった 目の前で起こる現象に身体が動かない 入り口に立つ彼女は1歩1歩近付いて来る 「あなたが話したいって言うから……来たよ……」 ふとメッセージの内容を思い出した “会って話さないか?” 「………やっと会えたね……」 近づく彼女の手には三角定規ではなく、彼女に突き立てられていたはずの包丁が握られている 動けない俺を尻目に 彼女は目の前にまで迫って来ていた 驚きから言葉が思うように出ない 彼女は手に持った包丁を見つめ、そっと涙を流した 「あなたが呼んでくれなかったら……ここまで来なかったよ……」 涙を拭い言葉を続ける彼女 「私いつも思ってたんだぁ……なんで私だけって………」 彼女の言葉に俺は生唾を飲み込む これは……あれだよな……完全に迎えに来たパターンだよな…… 彼女の視線が包丁からスッとこちらを向く その目に生気は感じられない 後退りした俺は ベットの淵に足を取られ後ろに倒れ込んでしまった 自分のベットに倒れ込む その時、頭に感じたのは冷たく柔らかい感触 視線を横へ向けると 安らかに眠る彼女の顔が見えた シンッとした部屋に自分の心臓の鼓動が響き渡る 「ハッ…ハッ…ハッ……」 呼吸もままならない いつの間にか 包丁を持つ彼女は俺の上に跨っていた 見上げた彼女の顔は泣きながら笑っている そしてその手には包丁が握られていた 俺か?……俺が彼女を……… 思い返してみるもディナーからの記憶が無い 酔った勢いでやったのか?……そんな理由…… どうしても思い出せない記憶 だが、目の前には包丁を持つもう1人の彼女が居る 悲しみに涙を浮かべ、喜びの笑みを浮かべる彼女が そっと俺の胸の中に入って来た 迫り来る彼女を前に俺は覚悟を決めた お前になら……殺されてもいいや……
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