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衝撃的だった
彼女のその呟きを聞いた途端
忘れていた過去を全て取り戻したのだ
再び、走馬灯が頭の中を駆け巡る
あぁ……全部思い出した……
…………俺はもう死んでたんだ……
彼女とのデートの日
この日は俺の誕生日でもあった
一世一代の婚約を交わしたあの日
彼女は俺の婚約指輪を受け取らなかったのだ
少し考えさせて欲しいと言って
そして、荒れた俺は
バーで慣れない酒を死ぬ程飲んだ
意識が飛ぶ程の勢いで
その帰り、俺は交通事故にあったんだ
泣きじゃくる彼女はスッと身体を起こした
「私のせいで……私のせいであなたが死んじゃったっ!!………会ってどうしても謝りたかったのっ!!……だから……だからっ!!……あなたからメッセージが来た時、嬉しかったっ!!……」
俺は驚いた
あの苦し紛れに送ったメッセージが
届いていたのだと
「あの時の事……私もずっと後悔してた………本当はすぐOKしたかったのっ!!……でも、あんな公の場でプロポーズなんかするから恥ずかしくて……嬉しかったのに恥ずかしくて……思わず考えさせて……って……」
確かにあの時、俺の声は大きかったと思う
身の丈に合わない高級ディナー店
いつもの居酒屋と違い、声が良く通る
言葉を続ける彼女から、また涙が込み上げてくる
「そしたら死んじゃうんだもっ!!……返事する前に勝手に遠く行っちゃったんだもんっ!!……ズルいよぉ~っ……」
また胸の中に飛び込んで来た彼女
俺はその身体をそっと抱き締め
優しく頭を撫でていた
胸の中で彼女は言葉を続ける
「言い逃げなんて許さない………だから会いに来たよ………遠かったけど会いに来たよっ……」
笑顔と涙を浮かべる彼女は小さく呟いた
「私も、一世一代の大勝負……あなたの居ない世界なんて考えられない……」
思わず笑顔と涙がこぼれ落ちていた
彼女の顔に負けないくらいに
………お前には敵わないな……
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