どうすれば上手くいくのだろうか

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 薄暗かった空に光が射し始めて、辺りはどんどん闇を吸収し、常夏の光景に戻っていった。空と海の間に沢山の折り重なった虹が見渡す限りどこまでも繋がる橋のように浮かび上がってきた。二人はその美しさに心を奪われると互いに言葉を失い、酔いしれるように眺めた。このまま成功した人生を続けたい誘惑に駆られた。じっくり眺めてから気を取り直して再び話し始める。男Aが口を開いた。 「結局、体の中にある遺伝子がどうしたって成功するようにできているんじゃないかな。稀に失敗できるような人が表れるのは生まれ持った気質なんだと思うんだよね。一方で一生懸命に努力すれば誰でも夢を叶えないことができる可能性があるわけだ。」 「わからんでもないがな。おまえは一度だけ大失敗しそうになったからな。経営している会社が傾き出した時は心の中で応援していたんだ。でも乗り切れてしまって残念だ。」 「ああ。とてつもなく高いリスクを背負ってみたんだが結果、大成功してしまった。一時的には財産を全て失いそうだったけど。」 「やっぱり地道にローリスクで浪費したりしながら散財していった方が無難なのかな。」 「多分な。ハイリスクだと一気に資産を無くす手段だと思って素人が手を出してしまいがちだからな。そんな安易な手段に莫大な資金が流入する結果、そのリスクがそもそも持っていたハイレベルな必要条件や十分条件を余裕で満たしてしまい成功する。世の中そんな簡単に大失敗できるような上手い話は無いらしいとつくづく思うに至ったけどな。」 「確かに上手い失敗話はなかなか無いな。ん?おい!あれを見てみろよ!」 男Bは少し遠くでビーチを歩いている一人の青年を指差した。その青年は周囲から注目を浴びているようだった。見窄らしい姿をしている青年は何か残念そうにとぼとぼと砂に埋もれる足を気怠そうに一歩一歩持ち上げてはゆったりと前へ進んでいる。男Aがその青年の方向をまじまじと見つめて言った。
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