むじなの涙

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あたしこと、「むじな」は とあるうすぐらいねぐらで うえに乗っかって腰をふるオジさんたちを冷ややかな目でながめていた。 天じょうのもくめをイチ、ニイ、サン、シー、ゴーと数えている間に オジさんたちはかわるがわる回っていく。 こんな日々がいく日もくりかえされ あたしのシコウなんか、 とうに ぶっこわれていたある日 突然 あのひとこと 「きつね」がたずねてきたんだ。 あのひとは、まるぼうずで目もあてられないあたしにてまねきして ヨビコのオバさんに 「このコ、ソトに連れ出すで。ナンボや?」 ヨビコのオバさんたら、ウソやろと言わんばかりに目をまるくしてた。 その日から、毎日毎日 あのひとはあたしをソトに連れ出しては行ったこともないようなところや見たこともないような場所を いっぱいあたしにケイケンさせてくれたんだ。 ボーリング、映画、ゲームセンター、パチンコ、カラオケスナックなど そりゃホントにトウジのあたしにしたら きらびやかなところばかりだった。 もう天じょうのもくめを数えることはなかった。 だって、あのひとが毎日毎日かしきりしてくれていたから。
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