第一章 【出口のない町】

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 朝起きた時に真っ先に目にするのは、日当たりの悪くて狭い部屋の光景です。  薄汚れた古い壁紙に、変色した天井、どんなに頑張って拭いてもくもりの取れない小さな窓からは申し訳程度に朝の光が差し込んでいます。  お世辞にも素敵とは呼べないこの部屋は薄緑の綺麗な敷物や可愛らしい小物を飾る事でどうにか女性らしさを保っていました。  部屋の隅っこにある小さな洗面台で顔を洗った後、鏡の前で自分に挨拶するところから私の一日は始まります。 「おはようサーシャ、あんたは今日もいい笑顔よ」  鏡の中の私はにっこりと笑いました。  毎日とかしている量の多い茶髪と鼻の辺りで主張しているそばかすにはいつも悲しい気持ちにさせられましたが、それでもこの明るい笑顔だけは私の長所であると自負しています。  住宅地から離れた場所にあるこじんまりとした古い家での生活は、今年でもう七年目になります。  十歳の頃に酒飲みの父から逃げるように家を出た母と私は、頼れる親戚もなくあちこちを転々として、やっとの事でこの緑豊かな田舎町に行き着いたのです。  貧しくとも母と二人で支え合って、心許せる友人も出来ました。  裕福ではないけれど私はとても幸せに暮らしています。  けれどただ一つだけ、私の身の回りには大きな問題がありました。
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