于后

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 深夜、于后は一人道を急いでいました。行先は夫のすぐ下の弟・発?王子のもとでした。屋敷に着くと先ず門番に来意を告げました。暫くして、ようやく現われた義弟に于后は差し迫った口調でこう告げました。 「……知っての通り、王には息子がいません。あなたが王位を継ぐべきでしょう」  これに対し王子は 「王位というものは天命が決めるもの。軽々しく論じるべきではありません。それに、このような夜更けに婦人が出歩くのは礼に反する恥ずべきことです」 と冷たく言い放つとそのまま奥に戻ってしまいました。  門前払いという辱めを受けた于后は腹が立ちましたが、ことは急を要するので気を取り直しその下の弟・延優王子のもとに行きました。  屋敷の前に辿り着き門番に来意を告げると、すぐに衣冠を調えた延優が姿を現わしました。そして、略式の挨拶をした後、于后を邸内に案内しました。  通された部屋には、酒肴が用意されていました。主賓の席に于后を座らせると、延優はその正面に平伏しました。  于后は、面を上げさせた後、次のように告げました。 「知っての通り、王には息子がおりませぬ。本来だと、あなたの兄である発?王子が王位に就くべきなのですが、先ほど王子のもとへ行ったところ、傲慢無礼な態度をとられたあげく、追い返されてしまいました……」  切々と訴える后の言葉を聴きながら、延優は王が既に亡くなったことを悟りました。 「……そこで、あなたこそが王位を継ぐべきだと思い、こうしてやって来たのです」  后がここまで言うと延優は再び平伏しました。 「仰せの通りにいたします」  承諾の言葉を聞いた后は謝意を述べながら延優の身を起こさせました。  延優は、夫を亡くして心細い思いをしているだろう于后にねぎらいの言葉を掛けながら卓上に置かれた肉を自ら切り分けようとしたところ、誤って自身の指を切ってしまいました。すると后は帯紐を解いて自ら彼の指に巻きました。二人は暫くの間、杯を交わしながら今後のことを話し合いました。后が帰ろうとしたところ、延優が 「夜道は危険です。私が王宮までお送りしたいのですが、よろしいでしょうか」 と申し出ると、彼女は快諾しました。  王宮に着くと延優は帰らず、そのまま留まりました。
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