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警察署に着くと、取調室の前で待っていてくれと言われて廊下を進む。
部屋の前の長椅子には、北条康太と園部仁美が既に座っていた。
園部仁美はわんわん泣いていて、北条康太が背中を押さえている。
近づくと、北条康太が顔を上げて説明を始めた。
明け方、園部仁美が秋葉千絵の家を訪ね、親が部屋まで起こしに行くと、秋葉千絵が死んでいるのを見付けたという。
「どうして園部は、そんな朝早くに秋葉の家に?」
佐藤武が尋ねる。
「心配だったからだ。俺もそうだ。お前は違うのか?佐藤、お前は見ていないのか?」
「見ていないのかって……まさか、お前ら」
「皆さん、どうぞ此方へ」
その呼び出しに北条康太は園部仁美を立たせて歩き出し、二人の会話は中断された。
二人の背中を見詰め、佐藤武は思った。
あの夢の事を言っているのか?
あの夢は俺だけじゃあなかったのか?
取調室では昨日の刑事が待っていた。
「すまなかったね、昨日の今日で。疲れているだろう?」
「いえ……」
おざなりな返事をして対面に座る。
「今日、君達に来て貰ったのはね、秋葉千絵さんが亡くなったとみられる時間に、君達四人がほぼ同時に彼女の携帯電話に連絡を入れていたからなんだ」
「四人……あ!高橋!高橋が居なかった!高橋は?何かあったんですか?」
「留守だったそうだよ」
「居なかった?秋葉の家にもですか?」
「居留守を使われただけかもしれんがね。容疑者でもないし逮捕状も無いし、中に突入するわけにもいかんからね」
刑事がおどけて言う。
警察ジョークらしいが、佐藤武には笑えない。
「……んん」
刑事は咳ばらいでごまかして、今度は真面目な声で質問する。
「君も秋葉千絵さんの家に行こうとしていたそうだね。他の二人もそこに居た。何故、彼女の家に集まろうとしていたのかな?」
「それは……言ってもどうせ信じて貰えません」
「言ってくれなければ、信じる事も信じない事も出来ないよ」
少しの葛藤の後、佐藤武は口を開いた。
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