大切なあなたへ

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いつもはまりは幼稚園へ、母は仕事に出掛けて行く。その間、私は家の中でお留守番だ。 「リマちゃん、行ってくるね。いい子で待っててね」 まりは私が入った箱をいつも枕元に置いて寝ていた。朝起きると、必ず箱を開けて私に顔を見せてくれる。 幼稚園に出掛けて行くとき、行ってらっしゃいの一言でも言ってやれたらどんなにいいだろうか。 人間の間では、私のような人形は主の居ぬ間に動き出し、いたずらをするなどという話もあるそうだが、そう簡単に動けるはずがない。 何せ私は人形だ。自分で歩く事はおろか、眉ひとつ動かせず、言葉ひとつ発する事はできないのだ。 私はまりが帰るまで、じっと一人ここで待つ。ああ、待ち遠しい。まりは今頃どうしているだろうか。 誰もいない家の時計が、昼を知らせてけたたましく鳴る。 もう昼か。まりは何を食べているだろうか。好き嫌いはしていないだろうか。私には空腹も食べ物の味も分からないが、おいしいごはんだといいね、まり。 夕方まで少し寝ようか。その頃にはまりが帰って来るだろう。今日は何をして遊んでくれるのかな。 うとうと…
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