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「小早川、有栖川さんは、承諾をされたのか?」
「勿論だよ。そうでなければ、社長として、名が出る訳がないだろう。
あの方は、倒れられてから、自由にならない体では、みんなに迷惑が掛かると、退職願いを出されたんだ。それが、通っているものだと思っておられたようだ。
けれど、実際のところ、いろいろあってね…人事で、保留にされたままなんだよ。
副社長の席は空席になっているんじゃない。まだ、あの方は、副社長なんだよ。
門倉君。スライド人事なんて言うのは、よくあることじゃないか。副社長が、社長になっても、なんら問題ないだろう?」
「…有栖川さんが、復帰されるなら、社にとって、これほどのことはない。だが、今の話は、寝耳に水だぞ!」
「君が、知らなかっただけだ。私は、前から、ずっと打診していたんだよ。職場への復帰を。…やっと、OKをもらえたんだ。このチャンスを逃すわけないだろう。
門倉君。残念だが、君が望んでいた副社長の椅子は、最初から空いてなぞいなかったんだよ。」
「小早川…わかっていて、お前は…。」
「どうとってもらっても構わないよ。言っておくが、私は、私利私欲で、この椅子が欲しかったわけじゃない。
社を変えていくためにも、若い世代に譲るためにも、布石を打っておかなくてはならないんだよ。だから、私が、副社長の椅子に座るのは、2年だけだ。
去り際を見極めるのも、力量と言うものだよ。門倉君の居場所は、もうここには、ないんだってことを、理解してもらわなくてはね。」
「…小早川…許さないからな…お前だけは。」
門倉は、デスクの上のものを、ガサッとまとめると、会議室を出ていった。
「さて、邪魔者がいなくなったから、続きを始めようか。」
小早川は、何事もなかったかのように、会議を再開させた。
この会議が、私達を困らせる原因になるなんて、誰が思っただろうか…。
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