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社長室の中には、岩田社長、小早川専務、それから、私達3人…。
「おはよう。有栖川、朝早くから、申し訳ないね。…体の方は、大丈夫かい?」
「心配には、及ばないよ。岩田には、色々と迷惑かけたね。」
「気にすることはないよ。君に、無理させたのは、私だからね。後始末くらいやらせてもらうのは、当然の義務だよ。
ところで、後ろのふたりを紹介してくれないと…。」
「ああ、そうだな。ふたりとも挨拶しなさい。」
お父様に言われて、私達は、岩田社長に、挨拶をすることになった。
「私は、営業部長補佐をさせていただいております。有栖川夏蓮です。企画営業2課、課長の指導係もさせていただいております。」
深くおじきをした私の後を継いで、佑樹も挨拶をした。
「初めまして。私は、営業部企画1課に籍を置かせていただいています、梶尾佑樹といいます。お見知りおきいただければ、光栄です。
個人的なことですが、こちらの夏蓮さんとは、この5月に結婚する予定です。」
佑樹も深くおじきをした。
「そうか、君達が噂の二人か…。いや、こちらこそ、よろしく頼むよ。若い世代には、期待してるんだからね。」
岩田社長は、にこやかに笑って、そう言った。
「それで、ふたりをどうして連れてきたんだ、有栖川。」
「いや、朝、家を出る前に、娘に詰め寄られてね。相談もなしに、職場復帰はないだろうって。
…まあ、私の体を気遣っての言葉だしね、強くも言えなくて。それで、事の次第を話さなきゃならなくなったんだよ。悪いが、君達からも、説明してやってくれないかなぁ。
佑樹君の方は、表で、見つけたんで引っ張ってきたんだ。ふたりの結婚式も近いし、私の息子になるんだからね。」
お父様が、佑樹を認めてくれていて、みんなに、息子になるんだって、言ってくれたことが、とても嬉しかった。
でも、それと、今回の件は、離して考えなきゃ。
「…小早川専務。前に、私達に、4月の人事異動を楽しみにしていなさいと、おっしゃいましたよね。
もしかして、お父様の復帰もその中のひとつなのですか?」
「そうだよ。まあ、これだけじゃないがね。詳しい人事は、明日、発表するから、楽しみにしてなさい。」
小早川専務は、私の気持ちなんて関係ないとばかりに、ニヤリと、笑い返してきた。
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