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「明日の人事ですか…。」
「まあ、ここまで来て、何も収穫なしじゃ、納得しないだろうから、少しだけ、教えてあげようね、夏蓮ちゃん。」
「専務!また、ちゃん付けで!やめてくださいって、何度も頼んでいるじゃないですか!」
「すまん、すまん。つい癖で、出てしまうんだ。これからは、気を付けるよ。夏蓮ちゃん。」
「言ったそばから!」
「まあまあ、夏蓮。小早川のジョークだ、付き合ってあげなさい。」
膨れっ面の私に、佑樹が、笑いを必死に堪えている。大人げない姿を見せてしまって、恥ずかしくなった…。
「…笑わないでくれ、佑樹。」
「うん、笑わないよ。でも、可愛い。」
「み、みんなの前で、平気な顔して、そんなこと言うなぁ!」
私は、絶対、顔が赤くなってる…。
恥ずかしい…。
でも、さっきまで緊張感が張り詰めて、痛かった空気が、少しだけ柔らかくなったのは確かだ。
「さて、本題に入ろうか…。」
そのあと、私達が聞いてしまったことは、嫌でも、自分達の線路を引くことに繋がってしまった。逃げられない線路の上に、自分から乗ってしまったのだ。
「この人事に関わる者に対して、詳しいことを、明日、午後からの会議で説明する。君達も、出席だ。」
「あのう…俺もですか?」
さっきは、改まって、“私”って言っていたのに、佑樹は思わず普段の“俺”呼びに戻っていた。
「そうだよ。勤務年数も、役職も関係ない。これは、大事なプロジェクトだ。」
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