273人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日、朝の玄関ロビーは、大騒ぎになっていた。
重役の顔が変わったことも、もちろんあるが、それ以上に、課長級以上の中間管理職の一新が、図られていたことが、原因だ。
そして、今までの中間管理職は、新しく新設された部署に集められていた。
50代以上のベテラン組と、それ以下の若手は、別々にされてだ。
ベテラン組は、窓際へ追いやられたのかと不安げで、若手は何が起こるのかと興味津々で。
その横を佑樹は、スルーして歩いて行った。
「おい、梶尾。梶尾!」
肩を掴まれて、佑樹は初めて振り向いた。
「ああ、佐野か…おはよう。」
「おはよう。それより、お前、異動の発表見ないのか?」
「見る必要ないよ…知ってるから。」
「えっ?…お前、俺の前を歩いてただろう。まだ見てないのに、なんで、知ってるんだよ。」
「…昨日、夏蓮と一緒に、社長室で、聞いたから。」
「はぁ?…社長室だぁ?…どういうことなんだよ?」
「言葉通りさ。見たいなら、見て来いよ。騒いでるのは、上が、社長以下課長まで、総替えだからだよ。
そうだ、言い忘れてた。俺とお前は、新しく新設された部署に転属だから。」
「なんで、二人?」
「詳しいことは、今日の午後から、人事異動になった社員向けのミーティングあるから、そこで聞いてくれるかな。
有栖川社長と小早川副社長からさ。」
「有栖川社長って…もしかして、王妃様が、社長に抜擢されたとか。」
「はぁ?…佐野。そんな馬鹿な話あるわけないだろう。
なんで、部長補佐の夏蓮が、一足飛びで社長なんだよ。普通に考えて、そんなのないだろう?」
「それは、そうだよな。」
「社長になるのは、お父さんだよ。夏蓮のお父さん。」
「あのよう…王妃様のお父さんって、なんでだ?」
そうだよな…俺と同じ条件だもんな…。知らなくて当たり前か…俺も、そうだったもんな。
そう思った佑樹は、きちんと佐野に話すことにした。
「あのな、夏蓮のお父さんは、元々、ここの副社長なんだよ。」
最初のコメントを投稿しよう!