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柔らかな春の陽射しの差し込む部屋で、無防備に、私にもたれ掛かって、うとうとしているのは、私の彼氏だ。
もうすぐ、私は、この男の嫁になる。
10歳も歳上の私で、本当によかったのか?
たまに、そんなことを思うときもある。
だってな、元々、私の我が儘で、彼氏にしてしまったのだから…。
けれど、彼は、そんなことは、今や、まったく気にしてないみたいで、むしろ、彼の方が、私に夢中になってくれている。
ああ、こんな幸せな時間、いつまでも続けばいいのになぁ。
もたれ掛かったせいで、肩に乗っていた頭が、ずれて落ちそうになった。私は、彼を、慌てて抱きとめた。
服を着ていると、分かりにくいけど、最近、ちょっと鍛えてるんだって言ってた彼は、男らしいかっちりした体型だ。
この腕に抱かれている時を、フッと思い出して、頬が少し熱い。
時々思うんだ。幾つになっても、乙女心と言うものは、存在するのだと。
私は、もう乙女度全開で、彼のためにって、あれもこれもしたくなる。
可愛いねって言って欲しくて、メイクをし、着飾って、いそいそと出掛けてくる。
美味しいよって言って欲しくて、彼のために、お料理の腕を磨き、せっせと作っては、食べてって、差し出す。
綺麗だって言って欲しくて、普段は、見えない部分まで、磨きあげる。
後もう少しよ。もう少しすれば、私は、彼だけのものになれるの…。
一生、彼のものになれるのよ。
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