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午後からの私は、営業部長補佐の仮面を着けて、大人しく座っていた。
大まかなことを昨日、聞いたとはいえ、こうやって公の場で発表されると、頭痛がしてくる。
だってな、お父様が社長に復帰したことだけでも、体調やなんかのことで、ハラハラしてるんだ。無理しやしないか、心配でしかたない。
それだけじゃない。自分自身のことも、目一杯だ。
部長補佐として、やらなくてはならない勉強がある。
仕事を振られたら、その仕事もしなくちゃならない。
結婚式まで、後1ヶ月半、そっちの準備もやらなくてはならないし。
それなのに、新体制の元、始まるプロジェクトで、何を振られるかわからないんだぞ。
私の頭と体は、もつのだろうか…。
新しく出来た部署の説明が始まった。
年輩の元管理職達は、神妙な顔をしている。そりゃそうだろう。役職をことごとく剥がされてるんだ、窓際だ、肩叩きだって、戦々恐々としてるのは、言うまでもない。だが、実際のところは、彼らの思いと逆だ。これからの2年間は、お給料も保証されているし、最悪2年後、辞めることになっても、退職金は、通常よりも上乗せされることになってる。
2年後、彼らの中から新役員を決める。ただの年功序列では、今までと変わらない。だから、研修を通して、総合的に判断して、会社経営を任せるに足りる人物を選ぶのだ。
研修は多岐に渡る。年輩社員達の大方が苦手なIT関連のものから、経理の基礎、経済学、統計学を取り入れたカリキュラムも用意されていた。
彼らは、2年間、びっしりと組まれたものをひたすら勉強して、実践する。
ここは、そのための部署だった。
「…我々、経営陣は、次の世代、更にその次の世代のために、今、変わらなければならないんです。そのために、みなさんの力が必要なのです。」
副社長となった小早川は、声高らかに言った。
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