273人が本棚に入れています
本棚に追加
若手の管理職は、今の話を聞いて、瞳を輝かせていた。自分達なら、あの人達より、もっと出来る。そう思ったからだ。
10年違うだけで、世界感が違う。生まれた時から、様々な電化機器に囲まれて育ってきたのだ。ITは、得意分野だ。
それに、商社を目指して就活してきた彼らの多くは、経済を学んできてる。中には、様々な資格を得ている者もいる。
商圏のグローバル化は、待ったなしだ。だから、いつ海外勤務を言われてもいいように、ビジネス英語だって、多少は身に付けている。
元々のスタートラインが、違うのだ。
まあ、年輩の管理職と同じ様なことを言われていたが、そういうのをちゃんと経営陣は見越していて、ハードルが、彼らより高く設定されていた。
つまり、オールマイティーに、結果を出さなくてはならないのだ。
ああ、私もか…。
他人事の様に見ていたが、それは、私にも当てはまるのだと、不意に思い出した。
「有栖川君。」
「あっ、はい。」
「君には、研修を兼ねて、5月から1年間、大阪の支店へ行ってもらうからね。肩書きは、今と同じ営業部長補佐だ。」
「えっ?!…あ、あの、来月ですか?!」
「そうだ。何かな?問題あるのか?」
「だって、結婚…式…」
私は、動揺して、考えがまとまらなくて、上手く話せない。言葉が出ない。
それまで、茅の外に置かれていた佑樹が、『副社長!』と、内辞を言い渡す小早川に向かって、声をかけ、手を挙げたのが見えた。
最初のコメントを投稿しよう!