もうすぐ、新妻…

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年度末は、毎年、バタバタしたまま終わってしまう。 去年もその前もそうだった。でも、今年は、少しばかり違っていた。営業部長補佐という肩書きをもらったことで、今までのように、ギリギリまでお得意先回りをしたり、飛び込み営業をする必要がなくなったからだ。 一応、2課付きということになっている関係上、それから、山本課長の指導係でもあるから、まったく、なにもしないわけではないけれど、気分的に全然違うんだ。 だけど、佑樹はそうはいかない。並みの新人よりは、仕事ができると言っても、まだ、2年目だ。去年の経験から、仕事を何かしらの形にして成果とすることを覚えてはいても、大変だったと思う。 その中で、期待していた以上のものを、残してくれたってことは、それだけ、苦労もしたし、努力もしたってことだ。 今日は、帰ったら、労ってやらなくてはな…。 私は、今夜の予定を考える。 美味しいくて、栄養のあるものを食べさせてやらなくてはな。 そうだ!佑樹の好きなハンバーグを作ろう! デミグラスをたっぷり使ったソースをかけて、付け合わせは、キラキラの目玉焼きに、人参のグラッセ、ポテトはマッシュして。緑がないな…うん、それは、ブロッコリーか、アスパラガスがいいな。 スープはどうしよう…コンソメがいいかな?それともポタージュ? 「…君。…有栖川君。」 「は、はい!」 「作業の手を止めて申し訳ない。」 「あっ、はい。何でしょうか?」 「会議の時間なんだ。今日のは、時間が掛かるかもしれんから、定時になったら、帰ってくれて構わないよ。」 「お心遣いありがとうございます。」 私は、席を立ち、深く一礼をして見送った。 パタンと部屋の扉が閉まって、私は、フゥと息を吐いた後、椅子に座り直した。 うわっ、やばかった…。大事な決算資料を見てる途中で、他のこと考えてたなんて、バレなくてよかったぁ。 この仕事10年選手の私でも、たまには、こう言うことがある。…というか、最近、多い気がする。そうだ、結婚が決まってからだ。浮かれてるのかな…。 みんなの上に立たなきゃならないのに、これじゃだめだよね。頑張らなきゃなきゃ。私は、改めて決意したんだ。
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