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勤めていた高校を辞めて四年。
最初の一年は当初の予定通り、世界各地を彷徨っていた。
格好つけて云ってみれば、自分探しの旅。
本当は傷心旅行。
ずっと引きずっていた、高校生のときに病気で死に別れた彼女への未練を断ち切るきっかけを得たのと、そのきっかけそのものへの未練も断ち切るため。
ずっとずっと、死に別れた彼女を忘れられずにいた。
ちゃんと話して、納得して……というのも変だが、まあ、そんな感じだったらここまで拗らせることはなかったかもしれない。
「検査入院だから」
「ちょっと悪いところが見つかったけど、すぐに治るから」
「治療には時間がかかるけど、完治率百パーセントだって」
笑顔でそう云っていた彼女の言葉を、なんの疑いもせずに信じていた自分に反吐が出る。
――そしてあの日。
「深雪」
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