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そうか宮野。
一瞬でも俺のこと、本気で好きでいてくれたんだ。
もうそれだけで十分。
最後の口づけを交わして別れる。
これからの宮野の、幸せを願いながら。
放浪生活を一年も続けると飽きて、帰国して僻地の高校で再び教師を始めた。
実家には連絡を入れていたし、宮野がいまでも俺の両親が経営するケーキ店に買いにきては、俺のことをたびたび尋ねてくるとも聞かされていた。
教師をしていることをどこで知ったのか、理事長が俺を呼び返してきた。
一瞬迷ったものの、それもいいかと帰ることにした。
……そして。
再会した宮野は俺の願いも虚しく、ひどく不幸な顔をしていた。
俺がいま住んでる、アパートで宮野がぽつりぽつりと話したことによると。
いまだに椛島の事件は、宮野に暗い影を落としているらしい。
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